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㈠ 外国法人の法人税

1  課税所得の範囲の変更等

⑴ 改正前の制度の概要

 恒久的施設を有しない外国法人が恒久的施設 を有することとなった場合(その有することと なった日の属する事業年度前のいずれかの事業 年度において恒久的施設を有していた場合に限 ります。)には、その有することとなった日

(以下「再進出日」といいます。)にその外国法 人が設立されたものとみなして、次の規定を適 用することとされています(旧法法10の 3 ④、

旧法令14の11⑥)。

(注) 恒久的施設とは、次に掲げるものをいいま す(法法 2 十二の十八)。

イ 外国法人の国内にある支店、工場その他 事業を行う一定の場所で政令で定めるもの ロ 外国法人の国内にある建設作業場(外国

法人が国内において建設作業等(建設、据 付け、組立てその他の作業又はその作業の 指揮監督の役務の提供で一年を超えて行わ れるものをいいます。)を行う場所をいい、

当該外国法人の国内における当該建設作業 等を含みます。)

ハ 外国法人が国内に置く自己のために契約 を締結する権限のある者その他これに準ず る者で政令で定めるもの

① 法人税法第142条第 2 項(恒久的施設帰属 所得に係る所得の金額の計算)の規定により 同法第57条(青色申告書を提出した事業年度 の欠損金の繰越し)の規定に準じて計算する 場合における同条第 1 項の規定(法法10の 3

④一)

② 法人税法第142条第 2 項の規定により同法 第58条(青色申告書を提出しなかった事業年 度の災害による損失金の繰越し)の規定に準 じて計算する場合における同条第 1 項の規定

(法法10の 3 ④二)

③ 法人税法第142条第 2 項の規定により同法 第59条(会社更生等による債務免除等があっ た場合の欠損金の損金算入)の規定に準じて 計算する場合における同条の規定(法法10の

3 ④三)

④ 法人税法第142条の 2 第 2 項(外国法人税 の額が減額された場合の還付金等の益金不算 入)の規定(法法10の 3 ④四)

⑤ 法人税法第144条の 2 第 2 項、第 3 項及び 第 8 項(外国税額控除に係る繰越控除限度額 及び繰越控除対象外国法人税額)の規定(法 法10の 3 ④五)

⑥ 法人税法第144条の13第 1 項(第 1 号に係 る部分に限り、同条第 9 項において準用する 場合を含みます。)、第 3 項(同条第 9 項にお いて準用する場合を含みます。)、第 6 項及び 第11項(欠損金の繰戻しによる還付)の規定

(法法10の 3 ④六)

⑦ 法人税法第142条第 2 項の規定により同法 第23条(受取配当等の益金不算入)の規定に 準じて計算する場合における法人税法施行令 第22条(株式等に係る負債の利子の額)の規 定(法令14の11⑥一)

⑧ 法人税法第142条第 2 項の規定により同法 第52条(貸倒引当金)の規定に準じて計算す る場合における法人税法施行令第96条第 6 項 及び第 8 項(一括評価金銭債権に係る貸倒引 当金における貸倒引当金勘定への繰入限度 額)の規定(法令14の11⑥二)

⑨ 法人税法第142条第 2 項の規定により同法 第53条(返品調整引当金)の規定に準じて計 算する場合における法人税法施行令第101条 第 2 項(返品調整引当金における返品調整引 当金勘定への繰入限度額)の規定(法令14の 11⑥三)

⑵ 改正の内容

 恒久的施設を有しない外国法人を合併法人と し、恒久的施設を有する外国法人を被合併法人 とする適格合併が行われた場合には、合併前に 被合併法人の恒久的施設の有していた青色欠損 金は合併法人に引き継ぐこととされていますが

(法法57②、142②)、合併法人が再進出日の属 する事業年度前のいずれかの事業年度において 恒久的施設を有していた外国法人である場合に は、その再進出日にその合併法人が設立された ものとみなされることから、その合併法人にお いては、再進出日の属する事業年度前において 生じた被合併法人である外国法人の恒久的施設 帰属所得に係る青色欠損金をその再進出日の属 する事業年度以後に繰越控除することはできな いこととされていました。また、外国税額控除 の繰越控除限度額及び繰越控除対象外国法人税 額についても、適格合併、適格分割又は適格現 物出資が行われた場合に同様の状況が生ずるこ とになっていました。そこで、今般の改正にお いて、恒久的施設を有しない外国法人を合併法 人、分割承継法人又は被現物出資法人(以下

「合併法人等」といいます。)とする適格合併、

適格分割又は適格現物出資(以下「適格合併 等」といいます。)によりその適格合併等に係 る被合併法人、分割法人又は現物出資法人であ る他の外国法人の恒久的施設に係る事業の全部 又は一部の移転を受けたことによってその合併 法人等である外国法人が恒久的施設を有するこ ととなった場合を、外国法人が設立されたもの とみなして上記⑴①から⑨までの規定を適用す る対象から除外することとされました(法法10 の 3 ④、法令14の11⑥)。

⑶ 適用関係

 上記⑵の改正は、恒久的施設を有しない外国 法人が平成28年 4 月 1 日以後に恒久的施設を有 することとなる場合について適用されます(改 正法附則22)。

2  国内源泉所得の範囲

⑴ 国内にある資産の運用・保有による所得

① 改正前の制度の概要

 外国法人は国内源泉所得について法人税の 納税義務があるものとされており(法法 4

③)、国内源泉所得は次に掲げる 6 種類の所 得に区分して定められています(法法138① 一~六)。

イ 恒久的施設帰属所得

ロ 国内にある資産の運用・保有による所得 ハ 国内にある資産の譲渡による所得 ニ 人的役務提供事業の対価

ホ 国内不動産等の貸付け対価

ヘ 上記イからホまでに掲げるもののほかそ の源泉が国内にある所得として一定のもの  上記ロのうち、下記のイからチまでに該当 するものについては、上記ロから除かれてい ます。これは、下記のイからチまでに該当す る国内源泉所得(恒久的施設帰属所得に該当 するものを除きます。)は、所得税の源泉徴 収のみで課税関係を終了させることから、こ れらの国内源泉所得が法人税の課税対象とな らないよう、除かれているものです。

イ 債券利子等(所法161①八)

ロ 配当等(所法161①九)

ハ 貸付金利子等(所法161①十)

ニ 使用料等(所法161①十一)

ホ 事業の広告宣伝のための賞金(所法 161①十三)

ヘ 生命保険契約に基づく年金等(所法 161①十四)

ト 給付補塡金等(所法161①十五)

チ 匿名組合契約等に基づく利益の分配金 等(所法161①十六)

② 改正の内容

 外国法人が得る履行期間が 6 月未満の売掛 債権等(短期売掛債権等)に係る利子は、国 内にある資産の運用・保有による所得に該当 しないこととされ(法令177②)、恒久的施設 を有しない外国法人又は恒久的施設を有する 外国法人の本店等がかかる利子を得た場合に は、法人税の課税対象とならない旨が明確化 されました。

(注) 外国法人の恒久的施設を通じて行う事業 につき短期売掛債権等に係る利子を得た場 合には、恒久的施設帰属所得として法人税 の課税対象となります。

③ 適用関係

 上記②の改正は、外国法人の平成28年 4 月 1 日以後に開始する事業年度の所得に対する 法人税について適用し、外国法人の同日前に 開始した事業年度の所得に対する法人税につ いては従前どおりとされています(改正法令 附則14)。

3  恒久的施設帰属所得に係る所得の金額 の計算

⑴ 外国銀行等の資本に係る負債の利子の損金算

① 改正前の制度の概要

 外国銀行等の各事業年度において、その有 する資本に相当するものに係る負債につき支 払う負債の利子がある場合には、その利子の 額のうちその外国銀行等の恒久的施設に帰せ られるべき資本に対応する負債の利子の損金 不算入の規定により計算した恒久的施設帰属 資本相当額に対応する部分の金額は、その外 国銀行等の事業年度の恒久的施設帰属所得に 係る所得の金額の計算上、損金の額に算入す ることとされています(法法142の 5 ①、法 令189②)。

 損金算入額は、具体的には、その外国銀行 等のその事業年度の恒久的施設帰属資本相当 額の計算に関する次に掲げる場合の区分に応

じそれぞれ次に掲げる算式により計算した金 額とされています(法令189②)。

イ 恒久的施設帰属資本相当額を規制資本配 賦法又はリスク資産規制資本比率比準法に より計算した場合

《算式》

規制上の自己資 本の額に係る負 債につき外国銀 行等が支払う負 債の利子の額

×

規制資本配賦法又はリ スク資産規制資本比率 比準法により計算した 恒久的施設帰属資本相 当額

規制上の自己資本の額

ロ 恒久的施設帰属資本相当額を連結規制資 本配賦法を用いて計算した場合

《算式》

規制上の連結自 己資本の額に係 る負債につきそ の外国銀行等が 支払う負債の利 子の額

×

連結規制資本配賦法に より計算した恒久的施 設帰属資本相当額 規制上の連結自己資本 の額

(注 1 ) 外国銀行等とは、次に掲げる者をい います。

1 ) 銀行法第47条第 2 項に規定する外 国銀行支店に係る同法第10条第 2 項 第 8 号に規定する外国銀行である外 国法人

2 ) 金融商品取引法第 2 条第 9 項に規 定する金融商品取引業者(同法第28 条第 1 項に規定する第一種金融商品 取引業を行う外国法人に限ります。)

である外国法人

(注 2 ) 負債の利子には、法人税法施行令第 136条の 2 第 1 項に規定する満たない部 分の金額その他経済的な性質が利子に 準ずるものを含みます(法令189①)。

 本制度は、確定申告書、修正申告書又は更 正請求書に損金の額に算入される金額の計算 に関する明細書の添付があり、かつ、その計 算に関する書類を保存している場合に限り適 用することとされています(法法142の 5 ②)。